(6)視聴覚教材
視覚によって直接理解できる視聴覚教材も、理科教育には欠かせない存在である。専門書や科学雑誌の図や写真を接写した海賊版が多いものの、できるだけ自作した。「細胞分裂」とか「タンパク合成」など動きを伴うものや、「植物の遷移」や「進化」など生徒の目にふれにくい教材には威力を発揮した。生徒の生物観をふくらませるには大変効果的なモジュールである。
【ねらい】視覚と聴覚による学習の援助(情報の拡大)
視聴覚教材の例
ヒトの発生(視聴覚教材)
自作スライドの説明
- ヒトの胎児(2か月) …… 羊膜中の羊水に保護された胎児(胚)
- ヒトの卵巣 …… 親指大、輸卵管の先端がラッパ状に開口
- ヒトの卵 …… 100~150ミクロン、一生の間に400個だけ成熟排卵、寿命は24時間
- 輸卵管の先端 …… フリル状の突起(排卵時に卵の方になびきすくい取る)
- 輸卵管内に取込まれようとする卵 …… 白い点
- 輸卵管内を移動中の卵 …… 粘液中を繊毛運動ににより子宮へと送られる。極体が3個みえる
- ヒトの精巣 …… コイル状に巻いた細精管の集まり(1本が50㎝、全長数百mに及ぶ)
- 精子の誕生 …… 細精管内で一日数千万個もの精子が減数分裂により誕生。寿命は3~4日間、しかし10%は奇形
- 受精競争中の精子 …… 卵を求めて子宮内に入り込み、さらに輸卵管へと進む(走化性、1cc中に3億個、1.5㎜/分)
- 受精の瞬間 …… 1匹の精子だけが受精を許される。(約10時間後に数十個だけが到達、残りは迷子か死滅)
- 精核と卵核の合体 …… 尾部を残して頭部の精核がゆっくり卵核へ接近。
- 卵割開始 …… ヒトの染色体46本がそろう。
- 2細胞期 …… 4→8→16と細胞数が倍加する。図の番号①,②
- 8細胞期 …… (受精後1日目)
- 15,32細胞期 …… 透明層がこわれる。
- 桑実胚 …… (受精後4日目)③
- 胞胚…… 卵割腔が生じる。④
- 子宮壁に着床 …… (受精後7日目)、軽い出血あり。⑤
- 排卵から着床までの過程(復習) …… 受精卵の68%が着床前に死滅。
- 子宮外妊娠 …… 輸卵管内に着床→大出血、前置胎盤→子宮内で窒息死(時には腹腔内に出て小腸に着床、出産は命がけ)
- 胚盤胞 …… 中央にある2層の平べったい細胞層から胎児が生じる。⑥
- 胚盤胞 …… (受精後10日目)外胚葉側 → 羊膜腔(羊水がたまる)2つの環が対合する。内胚葉側 → 卵黄のう(卵黄が浸出)
- 子宮壁から取り出した胚盤胞 …… 全長1㎜、表面に柔毛(→養分吸収)
- 外胚葉の下方後部に原口が生じる …… 縦長の溝(原始線条)⑦
- 中胚葉の形成 ……溝から外胚葉の細胞が内側に落込む。(胚葉の形成)
- 原腸胚 ……(受精後2週目)、三層構造(外胚葉-黒、中胚葉-青、内胚葉-赤)
- 原腸胚から胎児ができるまで …… 屈曲がおこる様子 (頭部が膨らむ→脳)
- 胎児の器官形成 …… 内胚葉 → 消化系、呼吸系
中胚葉 → 筋肉系、骨格系、循環系、排出系、生殖系
外胚葉 → 皮膚系、神経系、感覚系 - 90°回転し、胚盤が起き上がる ……(受精後3週目)⑧
- 神経胚 …… 神経管の形成が進む。体長米粒大
- 神経胚 …… 頭部のふたつのふくらみが後に脳になる。(体節は40対)
- 神経胚 …… 卵黄のうが完成し、栄養分を胚に補給するため血管が形成。
- 神経胚の断面 …… 脳、脊髄の完成。心臓の形成(ただし1心房1心室)
- 尾芽胚 ……(受精後4週目)屈曲が著しくなり、尾が形成される。⑨
つわりの開始。えら穴が存在する(ヘッケルの反復説)体長5㎜ - 尾芽胚 …… (受精後5週目)手足の突起が生じる。へその緒の形成 ⑩
卵黄より赤血球が形成される。体長1㎝ - 羊水中の尾芽胚 …… 赤い斑点は心臓(まだはく動しない)
- 1か月半の胚 …… (受精後6週目)目、耳、鼻の形成が進む。⑪
えら穴が消え始める。口のように見えるのは耳孔(口は目の横) - 顔の形成が進む …… 目は鼻より下に存在。(どんな美人も昔はこんな顔)
- 後方より観察 …… 頭が大きい(脳が先に発達)、水かき状の指が形成。
- 1か月半の胚 …… 脳にいくつかの区分ができ始める。
- 7週目の胚 …… 目、耳、鼻が完成する。手足に指が完成。背骨が完成 ⑫
尾が消失し、肛門が開く。体長2㎝、2g(1円玉2枚) - 7週目の胚を取り出してみた …… 柔毛が発達し、胎盤ができ始める。
- 7週目の胚を前面からみた …… だいぶ人間らしくなる。
- 2か月目の胚 …… 頭部が直立する。透明なまぶたができる。⑬
- 2か月目の胚の手足 …… 両手の大きさは3㎜、しかし骨も筋肉もある。
- 羊膜中の2か月の胚 …… つわりが弱くなる。へその緒、胎盤がほば完成
- 3か月目の胚 …… 子宮内いっぱいまで胚が成長する(3か月までを胚)
人間としては完成品。体長10㎝、25g(10円玉3枚) - 3か月目の胚 …… 腎臓が尿の排出を開始する。→ 出産後の排出の練習
羊水中の尿を胚が飲み込む。→ 出産後の吸収の練習 - 4か月目の胎児 …… 胎児が1か月に5㎝ずつ成長(子宮が肥大開始)母親の腹部が目立ち始める。
妊娠中期、体長、15㎝、200g - 4か月の胎児 …… 羊水中で盛んに運動する。(胎動開始)妊娠中期へ
- 血管がどんどん発達 …… 心臓がはく動を開始する。皮下脂肪がない。
- 5か月半の胎児 …… うぶ毛が生じる。羊膜をつかんだり、離したり。⑭
- 5か月半の胎児 …… 指をくわえて吸引の練習中。
- 6か月目の胎児 …… 出産に備えて頭が下になるよう回転する。頭髪、まゆ毛がはえる。胎動著しい。
体長30㎝、600g - 6か月の胎児の子宮内での位置 …… 下部に繊維状のクッションを用意。
- 8か月目の胎児 …… うぶ毛が消えてくる。皮下脂肪の形成。(しわの除去)⑮
目が見える、母体外でも発育可能。体長40㎝、1700g - 8か月の胎児の母体内での位置
- 10か月目の胎児 ……1個の受精卵から一人前の赤ちゃんに!(30兆個)
(臨月)頭髪が太く長くなり、皮膚が丸みを帯びてくる。 - 出産前期 …… 受精後280日(40週)、28日が1か月で実質9か月(十月十日説 → 最終生理から28日を1か月で数える)子宮収縮ホルモン(脳下垂体後葉ホルモン)→ 陣痛(産みの苦しみ→ 陣痛の間隔が短くなり… → 破水(羊膜が破れる)
- 出産後期 …… 頭を回転しながら、胎児が外に押し出される。(頭骨の天井部分がまだ柔らかい)→ うぶ声をあげて、肺呼吸の開始。→ 全身赤くなる、赤ちゃん(出産の刺激で胎盤呼吸から肺呼吸に切り替え)
- へその緒の切断 …… 独立した一人前の人間になる。不要になった胎盤は、出産後に排出される。(後産)
- 赤ちゃんの誕生 …… 母親の愛情を一杯に受け、すくすくと育つ赤ちゃん。
※新生児黄疸:胎児性ヘモグロビンの破壊
※母乳かミルクか → できるだけ母乳を。初乳には母親の免疫